メニュー

「人生のワンチャンス」

[2021.07.05]

昔、私には小さな小さな野望がありました。それは、「変わった名字になること」。
地味で出不精で人前に出ることを好まない自分でも、せめて一生つきまとう名前ぐらいは独特な個性がほしいなぁと秘かに企んでいたことがありました。そのためには、他の人の力をお借りするしかありません。そう、「結婚」です。今でこそ夫婦別姓が叫ばれていまが、もう何十年も前のことです、選択肢もなく女性が男性の姓に変わることを疑問に思いながらも、ならば逆にチャンスと捉えよう、と発想を切り替えた能天気な私。
夢はでっかく、目指すは「伊集院・二階堂・桐生」です。
ところが、いざ結婚してみると、そんなカッコいい名字の人と知り合うことすらなく、それどころか日本でトップクラスのシェアを誇る名字へと生まれ変わる始末(同姓さんごめんなさい)。いやいや、旧姓の方がまだマシだったよ… と憮然とする私は、ある昔話を思い出しました。

まだ若かりし頃に勤めていた、とある職場に、やたら私をからかってくる30代の先生がいました。その先生は私の顔を見るたびに「今日は前髪のカーブが甘すぎるぞ!」と持っていたボールペンで髪をグリグリとかき乱してみたり、「彼氏はおまえのどこが良いんだよ笑」などと、今なら立派なハラスメントとして勝訴できるようなことばかり。入職当初は「上司だしなぁ…」と少々困っていたのですが、「愛のあるイジり」であることは伝わっていたので、半年も経たないうちに私も言い返すようになり、逞しく成長していったのです。
そんな中、その先生を含めた3人の医師と院内を歩いていたときのことです。私の結婚が決まり、ふと例の先生に「そういえばおまえ、何ていう名字に変わるんだよ?」と訊かれ、「○○っていうんですよ。まったく、夢も希望も打ち砕かれて、ガッカリなんてもんじゃないですよ、もう」と答えた私に「なんだと〜〜コラー!!」と先生が大激怒。他の2人の先生は大爆笑しているし、え、なんで?と思っていたら…
そうです、その先生、私がまさに変わろうとしていた名字だったのです。忘れてた〜。
でも、最後に小さな反撃ができて嬉しかったです、イヒヒ。
しかしこの名字、何とかならないものかなぁ。よーしもう一度、チャンスを狙ってみようかな?いや、こんな能天気を見守ってくれるような物好きな人、今の夫ぐらいしかいませんね。はい、自分がいちばんわかってます、すみませんでした。。。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME