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「かけがえのない時間」

[2021.09.23]

私は父と10年も暮らしたことがありません。
私が幼少期の頃から単身赴任を選択し、高校生となってからは母が父の元へ出向くようになり、この時代にしては割と早くに結婚して遠方に嫁いだことからも、父親と同じ時間を共有する機会は一般的なご家庭よりも少なかったかもしれません。
それでも私は、穏やかで、頭が良く、口数が少ないながらもウィットに富んだユーモアのある父が好きでした。
そんな父が重い病気を患い、それとほぼ同時期に蔓延したコロナウイルス。呼吸器を患っていた父にとっては致命的とも言える悪しき天敵を近づけないために、県外在住で医療従事者である私が父に会うことは、どうしても許されないことでした。
それでも時間は刻々と過ぎ、いよいよ最期を迎える局面で数年ぶりに会った父はひと回りもふた回りも小さくなっていましたが、手を握り、消えゆく鼓動を聞き漏らすまいと胸に耳を押し当て、精一杯の感謝と愛を伝える私と2人きりの病室で、文字通り、眠るように旅立っていきました。
そんなある意味理不尽とも言える別れ方を身をもって経験したした私が願うことは、やはりコロナの収束です。
きっと世界中のあちこちで、多くの不毛な時間が流れていったことでしょう。
だからこそ我々には、やらなければならないことがまだまだたくさんあるのです。
大事な人と大切な時間を共にする。そんな当たり前のことが当たり前にできるように、今日も私は自分の職務を全うしなければ、と改めて思うのでした。
父上、これからも遠くから応援していて下さい。

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