真実はいかに?
「形あるものはいつか壊れるからそれまでは大切に使おうね」幼いとき、陶器の食器を不注意で割ってしまい、鬼ババのごとき叱られるかとビクビクしていた私に、母は諭すようにそう言い、慣れた手つきで片付けていました。4人姉弟で賑やかな環境、普段は些細な事でもお目玉をくらっていたので、たいそう驚いたのを覚えています。その後も食器の破損に関してだけは叱られたことがありませんでした。年月は経ち、自分が家事を一手に担うようになり、私、気付いてしまったのです。冒頭の言葉は母が自分に言い聞かせていたに違いない事を。良く言えば慌てん坊、悪く言えば雑、な質で食器を割るなんて良くある事だったのではないでしょうか。実は私も洗い物をしながら、手を滑らせたり扱いが乱暴だったりで食器を割ってしまうことが多く、子供を叱るなど、到底出来なかったのです。恐るべしDNA。今ではガラスのコップの破片のお片付けもお手のもの、飛び散る範囲まで予想出来るほどになりました。(威張れませんけどね)母は認知症が進行し記憶になどないと思いますが、いつか真実を聞いてみたいなぁと思っています。どんな話でも答えはいつも「覚えてなーい」と雑な返答ばかりなのですが … 楽しみです。
形はありませんが、人の気持ちほど繊細で壊れやすいものはないと思います。より、丁寧にそして大切にしたいです。