「人は見かけによりません」
ある日、息子2人と出掛けた帰り道のことです。
電車を降りて階段を上がっていると、ご年配の御婦人が、大きな手荷物とキャリーカートを持ち上げながら一段ずつ懸命に上っているのが見えました。「これは危ないぞ」と思った瞬間、両隣からダッシュで動く人の影。息子たちです。
童顔で穏やかそうに見える長男が「お手伝いしてもいいですか?」と重そうなマイバッグを預かりながら、おばあちゃまの手を取って上がり始め、次男が「こっち運びます」とキャリーカートを軽々と持ち上げ、ヒョイヒョイと駆け上がって行ったところ、突然そのおばあちゃまが「あっ、そんな…ちょっと待ってー」と叫んだのです。
見ていた私も「?」と疑問に思っていたところ、すかさず長男が畳み掛けます。
「大丈夫ですよ。弟なので。後ろに母親もいますから」
振り返ったおばあちゃまに、意味もわからず苦笑いで「足元、お気をつけ下さいね」と言ってみたものの、ワケがわかりません。
平坦な場所まで移動してからそのおばあちゃまとお別れして、開口一番「どういうこと?」と尋ねる私に、長男が笑いながら説明します。「こいつ(弟)と出掛けるとよくあるんだよ。盗まれると思われてるのかもね。アハハ」
忘れてました。
うちの息子たちは同性の歳子で類を見ないほどの仲良し兄弟で、頻繁に2人で出掛けては一緒に遊んでいたのですが、行く先々で「兄弟に見えない」と言われるほど全く似ておらず、オマケに次男は長男と真逆でかなりイカつい風貌のため、とても怖がられるのです。
なるほど…「おばあちゃまもさぞ怖かっただろうねぇ」と冗談まじりに次男に言うと、「いや、でもホントに運んだだけ、ってわかってもらえたときにすごく喜んでくれるから、やめられないんだよ。ギャップあるのも悪くないっしょ」と慣れた様子で動じません。
はて、される側としては良いのか悪いのか?答えは永遠にわかりませんが、色眼鏡を外してみたら、世の中、違った景色が見えてくるかもしれません。
私も夫の良いところを必死に探してみようと思いますが、逆に夫婦の場合は、濃いサングラスをかけた方が良いかもしれませんね…汗